常藤司法書士事務所
~相続・生前対策~

生前対策について

生前対策とは

皆さまは生前対策について考えたことはございますか?

生前対策は主に次の理由で行われます。

✔ 相続(争続)対策
✔ 相続税対策
✔ 認知症対策

上の2つはご自身の死後相続人となる方のために、3つ目はご自身の生前の生活とサポートしてくれるご家族のためにするものです。

ご自身の死後のことについて、考えていらっしゃる方は多くありません。
認知症になったあとのことを理解している方は多くありません。

「自分が死んだあとのことなんてどうでもいい」という声も耳にします。

そんな中、生前対策を考えることは素晴らしいことだと思います。

生前対策をして感謝されることはあれど、恨まれることはありません。
しかし、正しい知識と正しい内容でなければ、逆効果になることもあります。

まずは生前対策の種類についてまとめます。

生前対策の種類について

生前対策には、対策したい内容によって次のものが考えられます。

✔ 相続(争続)対策
① 遺言書
② 家族信託
③ 生前贈与
④ 生命保険

✔ 相続税対策
① 生前贈与
② 生命保険
③ 不動産の購入等

✔ 認知症対策
① 家族信託
② 任意後見契約

✔ その他
① 見守り契約、財産管理契約
② 死後事務委任契約
③ エンディングノート

これらの特徴やメリット・デメリットについて解説いたします。

遺言書について

「遺言書」は、最近耳にする機会が増えた言葉ではないでしょうか?

・作り方がわからない
・何を書けば良いかわからない
・そもそも何のために必要なのかわからない

といったお考えの方が多いかと思います。

そこで遺言書について以下の内容で解説していきます。
1.効果
2.できること
3.メリット・デメリット
4.種類
5.作り方
6.よくある勘違い
7.その他注意点等

1.効果
まず、「遺言書」を作ると法律的にどんな効果があるかご説明します。

【遺言書の法的効果】
①相続に関すること
②財産の処分に関すること
③身分に関すること

上記①~③については、遺言書に記載すると法的効力が発生し、関係者や役所、金融機関等は基本的に逆らうことができなくなります。

2.できること
それでは具体的にどんなことができるのかについてご説明いたします。

【できること(一部)】
①特定の相続人に特定の財産を渡すことができる
②相続人以外の人に財産を渡すことができる(寄付も可)
③認知や相続人の廃除ができる
④遺言執行者(遺言の内容を実現する人)を指定できる

3.メリット・デメリット
次にメリット・デメリットについてご説明いたします。

メリット
①自分の最後の意思を反映できる
②相続人が争わないよう予防できる
③相続人の手続きが楽になる
④相続人以外の人に財産を渡すことができる
⑤生前だと難しい婚外子の認知や相続人の廃除を死後に有効にできる
⑥遺言執行者(遺言の内容を実現する人)を指定することで、特定の相続人もしくは他人が相続手続きをまとめて行えるようにできる


デメリット
①作成に少し手間がかかる
②正しく作成しないと無効になる恐れがある
③紛失、破棄、偽造の恐れがある
④場合によっては裁判所手続きが必要となったり、余分な費用が発生する

【争続になりやすいケースについて】
司法統計より、相続財産が少ない場合の方が揉めることが多いとわかります。

特に財産のうち預貯金が少なくほぼ不動産のみという場合に争いになることが多いです。

つまり、「ウチはお金ないし、あるのはせいぜい家だけだから」と考えて何も備えずにいると、その後ご家族が争い、中には絶縁にまで発展してしまうケースが少なくありません。

どれだけ財産が少なかろうと、作っておいて損をすることはありませんので、すべての方に遺言書を作成することをおすすめします。

4.遺言書の種類
遺言書には普通方式遺言と特別方式遺言の2つがあり、普通方式遺言には3つの種類があります。
普通方式遺言の3つについて、比較したものが次の表です。

遺言書の種類 メリット デメリット
自筆証書 タダ、手軽、誰にも知られない 紛失・破棄・偽造・改ざんのリスクがある、ほぼすべて自署する必要がある、検認が必要になる、不備があれば無効になる、有効性について争いになる可能性がある
公正証書 紛失・破棄・偽造・改ざんのリスクがない、自署不要、検認不要 費用がかかる、証人が2人必要、内容を公証人や証人が知ることになる
秘密証書 内容を秘密にできる、自署不要 紛失・破棄・偽造・改ざんのリスクがある、費用がかかる、検認が必要、証人が2人必要、不備があれば無効になる

【自筆証書遺言書保管制度について】
自筆証書遺言は自分で保管することもできますが、近年の改正により法務局に保管してもらうことも出来るようになりました。
(※用紙の余白等細かいルールがある点は要注意)

これにより、本来デメリットであった「紛失・破棄・偽造・改ざんのリスクがある」、「検認が必要になる」点がなくなりました。

さらに、死亡時に指定した相続人や受遺者、遺言執行者に法務局から遺言書を保管している旨の通知がいくように設定することも可能です。

その代わりに若干の手数料(3,900円)と手間がかかりますが、メリットの多い制度ですので、自筆証書遺言を検討される場合は法務局に保管することをおすすめします。


5.作り方
遺言書はすべて法律で形式が定められています。
間違った方法で作成すると、その遺言書は無効となり、折角の対策が水の泡となるため注意が必要です。

【自筆証書遺言の場合】

→全文、日付、氏名を自署し、押印する

(ポイント)
①財産目録については自署せず、ワープロでも良い(その場合、すべての財産目録に署名押印が必要)
②押印は認印でも良いが、後日の争いに備えて実印の方が安心
③日付は明確に記載する(吉日等は不可)

【公正証書遺言の場合】
→公証役場に面談の予約をし、公証人と打ち合わせをして内容を決め作成する


(ポイント)
①公正証書遺言は公証人が作成するため自署不要(署名押印は必要)
②証人が2人立ち会う
③原本・正本・謄本の3通が作成され、原本は公証役場で保管し、遺言者は正本と謄本を受け取る(万が一紛失しても何度でも謄本を発行してくれる)

【秘密証書遺言の場合】
→遺言書を作成して署名押印のうえ、封筒に入れ同じ印を用いて封印し、公証役場に提出する

(ポイント)
①公証人は遺言書が存在することを証明してくれる
②証人が2人立ち会う
③遺言書は持ち帰り自分で保管する

【付言事項について】
遺言書には付言(ふげん)事項というものを記載できます。

これは法的効力はありませんが内容に決まりはないので、最期に家族に感謝を伝えたり、自分の亡き後どのようにしていってほいしか、財産の分け方についてなぜこのようにしたのかを説明し、争いにならないように想いを伝えることができます。

また、葬儀の方法やペットのことについてお願いすることもあります。


感謝・恨み・お願い・打ち明け、ぜひ自由に想いを伝えるために活用してください。

6.よくある疑問

Q1. 遺言書を作ったはいいが、あげるはずのお金を使ってしまった、不動産を売ってしまったという場合はどうすればいいの?

A. 遺言書に記載した内容のうち、その部分だけ撤回されたものとして無効になります。

それ以外の記載については依然有効なままです。

Q2. 貰うはずの人が先に亡くなった場合はどうなるの?

A. その場合も上記と同様、その部分だけ撤回されたものとして無効になります。

それ以外の記載については依然有効なままです。
なお、こういった場合はその次に誰にあげるかを事前に指定しておくことで、無効となることを防ぐことができます(これを予備的遺言といいます)。

Q3. 遺言書を作ったが、やっぱり作り直したい、もしくはナシにしたい場合はどうすればいいの?

A. 遺言書は何度でも撤回できます。
 仮に公正証書遺言で作った場合でも、自筆証書遺言書で撤回できます。
 そのため万が一に備えて1通作成しておいて、晩年自分の財産がある程度固まってから作り直すというのも1つの手かもしれません。

 ただし、全部を撤回して新しく一から作り直す場合は問題ないですが、一部分の内容を訂正したい場合は決められたやり方があるため注意しましょう。

【遺留分について】
遺言書を作るにあたって、「遺留分」というものに注意する必要があります。

遺留分とは、遺言書の内容に関わらず、法定相続人(兄弟姉妹を除く)に最低限度保証された相続権の割合のことです。

例えば、夫・妻・子の3人家族の場合、夫が死亡して遺言書で遺産のすべてを愛人に渡す旨の記載があった場合、妻と子は遺留分により遺産価格の2分の1の金銭を請求することができます。

遺留分の割合は以下のとおりです。
配偶者のみ 2分の1
子のみ 2分の1
親のみ 3分の1
配偶者と子 配偶者4分の1 子4分の1
(複数人いる場合は等分する)
配偶者と親 配偶者6分の2 親6分の1
(複数人いる場合は等分する)

遺留分が認められているのは、配偶者・子・親であり、兄弟姉妹には認められていません。(つまり、兄弟姉妹が相続人になる場合は遺留分を無視した遺言書を作成できます)

遺留分を考えずに遺言書を作った結果、争いに発展しまう可能性がありますのでご注意ください。

7.その他注意点等
その他、遺言書の作成における注意点は以下のとおりです。

①夫婦共同遺言は禁止
→夫婦が1つの遺言書を作成することはできません。
 それぞれ1人1通ずつ作成する必要があります。
 ただし、同じ用紙でも切り離すことで独立した遺言書となる場合は認められることもあります。

②遺言能力がなければ無効
→遺言者に遺言書の内容とその結果についての判断力がない状態で作成した場合は無効です。
例えば認知症になってから遺言書を作成する場合、著しく意思能力が低下している状態だと無効になるおそれがあります。

③遺言書を作成できるのは15歳から
→未成年者が遺言書を作成する機会はあまり多くないかもしれませんが、法律上遺言書を作成できるのは15歳からとなっています。

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