常藤司法書士事務所
~相続・生前対策~

相続について

相続が発生した際の手続きについて

相続が発生した際の流れについてご説明いたします。

大きく分けると5つに分解できます。

1.葬儀に関する手続き
2.年金や健康保険に関する手続き
3.遺産相続に関する手続き
4.税金に関する手続き
5.その他の各種名義変更や解約に関する手続き

これらには、それぞれ期限が決められており、期限内に行わないと罰則があるものや、請求できた権利がなくなってしまうものがあります。

それぞれの期限は非常に細かく分かれているため、困った際にどこに連絡すべきかを整理しておきましょう。



1.葬儀に関する手続き


まず、お亡くなり後、医師から「死亡診断書または死体検案書」のいずれかを受け取ります。
その後、死亡を知ってから7日以内に役所に死亡届と火葬許可証申請書を提出します。

なお、一般的には葬儀社が死亡届と火葬許可証申請書の提出を代行してくれるため、ここはお任せするのが安心かと思います。

困ったら「病院」「葬儀社」に連絡しましょう。



2.年金や健康保険に関する手続き


〇年金について
年金については、次の手続きがあります。
・年金受給停止(厚生年金10日以内、国民年金14日以内)
・国民年金の死亡一時金請求(2年以内)
・遺族年金の請求(5年以内)
・未支給年金の請求(5年以内)

困ったら「年金事務所」「年金センター」に連絡しましょう。

〇健康保険について
・健康保険の資格喪失届(国保または後期高齢者医療保険は14日以内、健康保険は5日内)
・介護保険の資格喪失届(14日以内)
・雇用保険の受給資格証の返還(1か月以内)

困ったら「お役所」に連絡しましょう。



3.遺産相続に関する手続き


不動産や預貯金などの遺産相続に関する手続きの流れは、次のとおりです。
(それぞれの詳細は別のページで具体的に解説します。)

①遺言書の有無を確認する。

【遺言書がある場合】
②遺言書の種類が公正証書遺言または法務局に保管されている自筆証書遺言以外の場合は、家庭裁判所に提出して検認をする。
③遺言書に記載のとおり、遺産を承継する(遺言執行者の指定がある場合は、遺言執行者が手続きを行う)。

【遺言書がない場合】
②相続人を調査する。
③相続財産を調査する。
④相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する。
⑤遺産分割協議書を元に、遺産を承継する。
※不動産を相続する場合、3年以内に相続登記をすることが義務付けられています。

困ったら「司法書士」「弁護士」「行政書士」に連絡しましょう。



4.税金に関する手続き


税金に関しては主に「準確定申告」「相続税の申告」の2点があります。

〇準確定申告
故人が個人事業者などで確定申告が必要だった場合、相続人が代わりに確定申告をすることです。
期限は「死亡を知った日の翌日から4か月以内」です。

〇相続税申告
遺産総額が基礎控除を超える場合に相続税の申告が必要となります。
基礎控除=3,000万円+法定相続人の数×600万円
期限は「死亡を知った日の翌日から10か月以内」です。

困ったら「税理士」「税務署」に連絡しましょう。



5.その他の各種名義変更や解約に関する手続き


上記以外にも、次の手続きが必要かどうかご確認ください。
・公共料金の名義変更
・生命保険金の受取り
・定額サービスの解約
・金融機関への口座凍結連絡

※「相続放棄」を検討している場合は、上記の手続きは一切行わずに、まずは専門家にご相談くさい。
例えば故人名義の契約を解約する等してしまった場合、その行為が相続人よる財産の処分とみなされ、相続放棄が認められなく恐れがあります。

以上が大まかですが、必要な手続きとなります。
この他にも相続の発生により必要となる手続きは多岐にわたるため、生前に準備をしておくこと、相談できる専門家を見つけておくことをおすすめします。

相続で気を付けるべきこと

相続が発生した場合、まずは以下の点を確認するようにしましょう。

✔ 各手続きの期限
✔ 遺言書の有無
✔ 誰が相続人になるのか
✔ プラスの財産だけでなくマイナスの財産がどれくらいあるか
✔ 相続税の申告・納付が必要になりそうか



1.各手続きの期限について

相続が発生した際、7日以内~3年以内の間で様々な手続きの期限が設定されています。
その中で特に注意すべきものはこちらになります。

相続放棄 3か月以内
準確定申告・納付 4か月以内
相続税申告・納付 10か月以内

相続放棄の場合、期限をすぎると放棄ができなくなる恐れがあります。
また、準確定申告と相続税申告については、期限内に申告して納付をしないと、1日ごとに延滞税という税金がかかり、不要な出費が発生するため注意しましょう。



2.遺言書の有無について

亡くなった方が遺言書を作成していた場合、相続人の方の手続きは非常に楽になります。

例えば、預貯金の相続や不動産の名義変更について、遺言書がなければ相続人全員で誰がどの財産を取得するか話し合い、遺産分割協議書を作成しなければ、手続きを進めることができません。
また、相続人の中に未成年者、認知症や障がいがあり判断能力がなくなっている方、連絡が取れず行方不明の方がいる場合、遺産分割協議には膨大な時間と手間、費用がかかってしまいます。

しかし、遺言書があれば一転、その遺言書の記載にある財産の受取人が単独で手続きをすることができます。
加えて戸籍の取得範囲も狭まり、簡易迅速に相続することが可能になります。

遺言書の有無については優先して確認するようにしましょう。
(※遺言書の内容については、生前対策の項目で詳しく説明しております。)



3.誰が相続人になるのか

相続人の確定は相続発生時の優先事項になります。
相続人の人数、範囲によって、次の内容に影響があるためです。

・法定相続分の割合
・相続税申告の要否
・限定承認手続きの可否
・遺産分割協議の可否

誰が相続人になるのかは、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍を確認する必要があります。
戸籍の読み取りは複雑な場合もあるため、困ったら専門家にご相談ください。



4.プラスの財産だけでなくマイナスの財産がどれくらいあるか

マイナスの財産次第で、相続放棄を検討する必要があります。
相続放棄には3か月以内という期限があるため、迅速な確認が必要となります。
また、相続放棄をするにあたってはいくつか条件があり、特に注意が必要なのが、亡くなった方の財産の処分をしてはいけない点です。

処分には広い意味があり、例えば相続放棄を検討しているにも関わらず、亡くなった方の預貯金を引き出したり、私物を売却したり、税金の支払いをしたり、スマホの契約を解除したり、賃料の支払いをしたり、、、

上記のような行為をすると、処分行為にあたり、相続を承認したものとして放棄が認められなくなる可能性があります。
借金等のマイナスの財産をきちんと調べたうえで、慎重に行動するようにしましょう。



5.相続税の申告・納付が必要になりそうか

相続税はすべての相続人が支払う必要がある訳ではなく、一定以上の相続財産がある場合のみ支払う必要があります。

基礎控除=3,000万円+法定相続人の数×600万円

上記基礎控除の範囲内であれば不要になりますが、例えば不動産があったり、実は株をたくさん持っていたりして簡単に基礎控除を超えてしまう場合も多いです。

また、基礎控除以外にも様々な特例があり、相続税の支払いは不要だが申告だけは必要といったケースがあります。

税金の計算はとても複雑なため、必ず税理士や税務署に相談するようにしましょう。
(相続に強い税理士のご紹介も可能ですので、お気軽にご連絡くださいませ)

誰が相続人になるのか

誰が相続人になるかについて、民法という法律で定められています。

配偶者 常に相続人
直系卑属(子、孫) 第一順位
直系尊属(親、祖父母) 第二順位
兄弟姉妹 第三順位

上記のように、配偶者+子>直系尊属>兄弟姉妹が相続人となります。
配偶者がいない場合は、子>直系尊属>兄弟姉妹が相続人となります。

つまり、子がいれば、直系尊属と兄弟姉妹は相続人にはなれない、
子がいなくて直系尊属がいれば、兄弟姉妹は相続人になれない、
子も直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。

注意すべき点として、相続には代襲(だいしゅう)というものがあります。
これは、被相続人A(亡くなった方)が死亡するよりも前にその相続人Bの方が亡くなっていた場合、被相続人Aの相続人になるのは、相続人Bの子Cになるというものです。
相続手続きを長期間放置していたりする場合、相続人間での死亡の順番などで誰が相続人になるかが複雑化しますので、ご注意ください。

ちなみに配偶者、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹の誰もいない場合は、相続財産は国のものになります。
(※内縁関係など、生前特別の縁故があった者は特別縁故者と呼ばれ、相続財産を受け取れる可能性もあります)

相続人でなくなる場合

本来相続人である方が、相続人ではなくなるケースが3つあります。
それが「相続欠格」「推定相続人の廃除」「相続放棄」の3つです。

1.相続欠格
相続欠格とは、次の行為をしたときに該当します。

✔ 被相続人や相続について先順位または同順位にある者を故意に死亡させたり、死亡させようとしたりしたために刑に処せられた
✔ 被相続人が殺害されたことを知って告発や告訴をしなかった
✔ 詐欺や強迫によって被相続人に遺言を書かせたり、撤回させたり、取り消させたり、変更させたりした
✔ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造したり、変造したり、破棄したり、隠匿したりした

相続欠格に該当するとその相続については自動的に相続権がなくなります。
(単に相続できなくなるだけでなく、遺言書で指定されていた場合も財産を受け取ることができず、遺留分もなくなります)
また一度相続欠格に該当すると、取消しや解除といった回復する手段は原則ありません。

2.推定相続人の廃除
推定相続人の廃除とは、被相続人が遺留分を有する相続人の廃除を家庭裁判所に申し立て、認められた場合に当該相続人の相続権を失わせる制度です。
廃除が認められる要件は以下のとおりです。

✔ 虐待を受けている
✔ 重大な侮辱をされた
✔ その他著しい非行があった

廃除を利用する場面としては、1円たりとも相続財産をその相続人(虐待等をした人)に渡したくないというときです。
通常、財産を相続させたくない者がいる場合、遺言書でその者以外の相続人に財産を渡す旨を記載しますが、その場合遺留分(兄弟姉妹は遺留分なし)を有する相続人は、一定割合の金銭を請求することが可能です。
しかし、廃除が適用されると、その者は遺留分を請求する権利もなくなるため、一切の相続財産を受け取ることができなくなります。
(※遺留分については別のページで詳しく解説しております)

※廃除を利用する場合の注意点
①戸籍に記載される
廃除の申立てが認められた場合、家庭裁判所より「廃除の審判書の謄本」と「確定証明書」というものの交付を受け、10日以内にそれらを持って本籍のある役所に「推定相続人廃除届」を提出する流れとなります。
役所は「廃除の審判書の謄本」と「確定証明書」を確認したうえで、戸籍に廃除の旨を記載します。
つまり、廃除された者は、戸籍を見ることで自分が廃除さらたことを知ることができ、虐待や侮辱が悪化する可能性があります。

②認められる確率が低い
廃除というのは相続権を失くす極めて重い行為のため、家庭裁判所は慎重に検討します。
そのため、司法統計によると廃除が認められるのは、例年申立件数のうち約20%ほどとなっております。
廃除を検討する際は、虐待・侮辱・非行に関する証拠を徹底的に用意しておく必要があります。

③代襲相続は発生する
相続放棄と異なり、相続欠格・廃除は代襲相続が発生します。
代襲相続が発生すると、欠格・廃除が適用され相続人でなくなった者の子(または孫)が相続人となります。
万が一代襲相続人にも相続させたくない場合は、遺言書等別の手段を考える必要があります。

3.相続放棄
相続放棄については別のページで詳しく解説しておりますのでそちらをご参照ください。

法定相続分について

相続人のうち、誰がどのくらい財産を貰えるのかについて、民法という法律で決められています。

配偶者と子 2分の1ずつ
配偶者と直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1
配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1
配偶者のみ すべて
子のみ すべて(複数人いる場合は均等割)
直系尊属のみ すべて(複数人いる場合は均等割)
兄弟姉妹のみ すべて(複数人いる場合は均等割)

これは各相続人に保証されている権利ですが、遺産分割協議によって全員の合意のうえこの割合は自由に変えることができます。

戸籍の集め方

相続が発生した場合、まずは相続人を特定するため、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までのすべての戸籍を集める必要があります。

戸籍は、被相続人の本籍の役所にて取得可能で、これまで婚姻や転籍により本籍を異動している場合は、そのすべてを取得する必要があります。
しかし、すべての本籍の役所を回る必要はなく、現在広域交付という制度により、最寄りの役所に行くことですべての戸籍を取得することが可能になりました。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html

いくつか注意点があります。
①郵送、代理不可のため直接窓口に行く必要がある
②配偶者、直系卑属(子、孫)、直系尊属(親、祖父母)は請求できるが、兄弟姉妹はできない
③顔写真付きの本人確認資料が必要
④予約が必要で時間がかかる

また、司法書士等の専門職では職務上請求といって、特別な手続きをせず戸籍や住民票を取得することが可能ですので、ご自身で取得が難しい場合はお役立てください。

相続財産の調査方法

相続財産の調査については、財産の種類ごとに方法があります。

●預貯金口座
現状、すべての預貯金口座を一括照会する術はないため、1つ1つ地道に調べていく必要があります。
具体的には、通帳・キャッシュカード・その他金融機関に関する書類を元にそれぞれ照会をかけていきます。
相続開始時点での残高は「残高証明書」を請求し、過去5年~10年の取引記録を確認したい場合は、「取引明細書」を請求します。
1つの金融機関でも複数の口座を持っている場合もあるので、照会をする際には漏れのないよう注意しましょう。

●不動産
所有不動産の調べ方としては、権利証・固定資産税の納税通知書(課税明細書)・名寄帳を元に登記事項証明書を取得し、公図等を駆使して私道のチェックも行います。

※2026年2月2日より、「所有不動産記録証明制度」が施行され、名義人ごとに不動産の一括照会が可能になり、より簡単に調べることができるようになります。

●株式・投資信託・有価証券
定期に届く取引明細表などを元に、証券会社や信託銀行に照会します。
また、「証券保管振替機構(ほふり)」に開示請求をすることで、一括で照会することも可能です。
未上場の株式については、当該会社に対して「株主名簿記載事項証明書」の発行を依頼します。

●生命保険
生命保険に関する契約資料や定期に届くハガキ等を元に保険会社に照会します。
また、「生命保険協会の生命保険契約照会制度」を利用すれば、一括で照会することも可能です。

●借金等、マイナスの財産について
金銭消費貸借契約書など、各種契約書がないかを探します。
また、通帳の取引履歴を確認して引き落とし先を調べる方法もあります。
その他、信用情報機関(全国銀行協会・JICC・CIC)に開示請求することも可能です。

遺産分割協議について

遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった方)の遺産を誰が貰うかについて、相続人全員で話し合うことを言います。
その後、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書と併せて預貯金や不動産の相続手続きで使用します。

ポイントは相続人全員という部分で、相続人全員が関与せずにした遺産分割協議は無効となります。
問題になる場面はいくつかあります。

✔ 相続人が不仲
✔ 相続人が大勢いる
✔ 未成年者がいる
✔ 認知症(判断能力が不十分)の方がいる
✔ 障がい(判断能力が不十分)のある方がいる
✔ 音信不通、行方不明の方がいる

これらの場合、遺産分割は難航し一筋縄ではいきません。

例えば、相続人が不仲の場合、家庭裁判所にて「遺産分割調停」、「遺産分割審判」の手続きが必要になります。

未成年者がいる場合、未成年者は単独で法律行為(遺産分割協議)を行うことができず、通常は親権者が代理しますが、親権者と一緒に相続するときは利益相反にあたり「特別代理人の選任」が必要となります。

認知症や障がいにより判断能力が不十分な方がいる場合、これらの方も単独で法律行為(遺産分割協議)を行うことができないため、「成年後見人の選任申立て」をし、成年後見人が本人に代わって遺産分割協議を行います。
成年後見人が本人と一緒に相続する場合、利益相反にあたり「特別代理人の選任」が必要となります。

音信不通、行方不明者がいる場合は、失踪宣告により亡くなったものとしたり、不在者財産管理人の選任申立てをし、不在者財産管理人が代わりに遺産分割協議を行うことになります。

このように相続人に1人でもイレギュラーな事態が発生した場合、複雑かつ時間のかかる手続きが必要となります。

法律に詳しくない状態でこれらを対処するのは非常に大変ですので、専門家に相談することをおすすめいたします。

相続放棄について

相続放棄というのは、その他の相続手続き用語の中では比較的知られている言葉かと思います。
一見すると簡単なもののように思われますが、非常に危険で落とし穴の多い手続きですので、注意が必要です。



注意点その1.期限がある

相続放棄を選択するには、期限があります。
相続には3つの種類がありまして、相続人は期限内に「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの中から1つを選択することになります。

(1)単純承認
これは被相続人(亡くなった方)のすべての財産(プラスの財産とマイナスの財産どちらも)を相続することを意味します。
要件は次のとおりです。

①自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内に限定承認、または相続放棄をしなかった場合
②相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合

つまり、3か月経っても何もしなければ自動的に単純承認したことになります。
また、相続財産を処分した場合も、単純承認したことになります。
②については、限定承認、または相続放棄をした後でも適用されますので、限定承認、または相続放棄をする場合は相続財産の扱いには注意が必要です。

(2)限定承認
限定承認とは、相続財産の限度で被相続人の債務を負担し、残りがあれば相続するという手続きです。
期限は自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内です。

一見すると良いとこ取りのように思えますが、実は非常に手間と時間と費用がかかる手続きのため、利用率が低いのが現状です。
(利用件数:年間約700件ほど、相続放棄は年間約23万件ほど)

相続放棄との比較は次のとおりです。
限定承認 相続放棄
単独 or 全員 相続人全員で行う必要がある 放棄したい人だけが単独できる
完了までの期間 手続きが完了するまで1年ほど要する         申述書を提出すれば終了
※家庭裁判所から照会書が届いたら
それに回答すればOK
発生する費用 裁判所費用
公告費用
専門家報酬
裁判所費用

●手続きの流れ
①必要書類を集め、家庭裁判所に限定承認申述書を提出する
②官報で公告する
③相続財産を換価処分(競売)する
④債権者へ債務を弁済する
⑤残りがあれば相続人が取得する

利用を検討するケースとしては、プラスの財産もマイナスの財産もどれくらいあるかわからない場合や、先祖代々の土地など相続放棄できない事情がある場合です。
※ただし、限定承認をする場合は不動産は競売に付す(任意売却不可)ため、先買権という権利を行使して押さえる必要があります。

(3)相続放棄
相続放棄を選択する場合も、限定承認と同様に3か月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する必要があります。
ただし、どうしても3か月以内に判断が間に合わないという場合は、家庭裁判所に1~3か月の期間伸長申述をすることも可能です。(正当な理由が必要)
また、3か月の期間を経過した後でも、相続放棄が認められる場合がありますので、その場合は専門家にご相談ください。



注意点その2.家庭裁判所に申述する必要がある

前述のとおり、単純承認以外を選択する場合は必ず家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。
よく勘違いされるのが、遺産分割協議にて相続財産を一切受け取らないことを相続放棄を思っている方がいます。
家庭裁判所にて手続きをしないまま3か月経過してしまうと放棄ができなくなる恐れがありますので、注意しましょう。



注意点その3.撤回できない

一度相続放棄が受理されると原則として撤回することはできません。
3か月以内と時間に余裕がないですが、判断に時間を要する場合は期間伸長申述を行いましょう。



注意点その4.財産管理義務は残る

相続放棄をした場合でも、相続放棄のときに相続財産を現に占有していた場合は、管理義務(保存義務)を負います。
(保存義務:相続財産を滅失、損傷させる行為をしないことや現状を維持するために必要な行為をすること)
他の相続人、または相続人が誰もいない場合に選任される相続財産清算人に引き渡されるまで保存義務が続きます。
保存義務に違反すると、ほかの相続人や相続財産清算人から損害賠償を請求される恐れがあります。



注意点その5.次順位の者が相続人になる

例えば、親が死亡し、子2名が相続人だったとします。
この場合、このうち1人が相続放棄をした場合は、相続人は放棄をしていないもう1人の子のみになります。
一方、子2名が両方相続放棄をした場合、相続人の権利は次順位の直系尊属(親、祖父母)に移ります。
同じく、直系尊属が放棄をした場合やそもそも既に亡くなっていた場合は、兄弟姉妹が相続人となります。
※よくある勘違いとして、自分が相続放棄をすることで放棄をした人の子どもが相続人なると考える方がいますが、相続放棄の場合は代襲相続は発生しないため、子どもに借金が行くことはありませんのでご安心ください。

このように、自分が相続放棄をすることによって他の親族へ借金が行く可能性がありますので、放棄をする場合は事前に連絡をするなどして共有しておくことをおすすめします。

準確定申告・相続税申告について

※準確定申告と相続税申告については、司法書士は取り扱うことができず税理士の分野となりますので、あくまで一般的かつ簡易な説明となりますのでご了承ください。

1.準確定申告
簡潔に言いますと、被相続人(亡くなった方)の代わりに相続人が被相続人の確定申告を行うことです。
申告・納付期限は「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」となります。
通常の確定申告と同様、必要なケース・不要なケースがありますので、不安な方は税理士に相談することをおすすめします。

2.相続税申告
相続について、1番に気にされる方が多いのが相続税のことだと思います。

申告・納付期限は「「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」です。

相続税には基礎控除を含む様々な控除や特例があり、細かい要件が設定されていますので、一般的な用語の内容のみ記載します。

基礎控除額 3,000万円+600万円×相続人の数が非課税になる
小規模宅地の特例 被相続人が自宅や事業のために使用していた土地を相続した場合、相続税評価額を最大80%減額できる
配偶者の税額軽減 配偶者については、1億6,000万円または法定相続分のいずれか高い方の金額までは非課税になる
未成年者控除 未成年者については、18歳になるまでの年数につき、1年10万円が相続税額から控除される
障害者控除 障害者については、85歳になるまでの年数につき、一般障害者は10万円、特別障害者は20万円が相続税額から控除される
相続税の2割加算 相続人が配偶者・子・親以外の場合は、相続税額が2割加算される
※養子は子と同じなので対象外だが、孫養子の場合は2割加算の対象となる。なお、子がすでに死亡しており、孫が代襲する場合は、2割加算の対象外となる

 3.相続税対策について
相続税対策とは、一般的に「相続税の節税」と「納税資金の確保」の2つを意味することが多いです。

(1)相続税の節税
相続税の節税方法としては、主に次のような方法があります。

①不動産の購入、アパート建築等
②生命保険契約
③生前贈与

これらの手続きについては司法書士としてお手伝いすることができますが、実際に節税手段として適切か、かかる費用を考えて割に合うのか、その後の運用は問題ないか等、多方面からの視点が必要になるため、検討される場合は必ず税理士に相談するようにしましょう。

どの税理士に頼めば良いかわからないという方は、信頼できる税理士先生をご紹介しますのでお気軽にご連絡ください。

(2)納税資金の確保
相続税の支払いは、原則として現金一括払いとなります。
しかし、仮に相続財産の割合が自宅不動産等の現金化が困難な財産が多い場合、納税資金の確保は容易ではありません。
そのため、可能な限り生前にお金を準備しておくことが理想的ですが、万が一の場合は次のような方法が考えられます。

①延納 
支払時期を先延ばしする
注意点:利息が発生する

②物納 
現金ではなく物で支払う
注意点:条件が厳しい

③借入 
銀行から納税資金の借入れをする
注意点:利息が発生する

④不動産の売却 
不動産の売却代金から支払う
注意点:期限内に売却するために安売りしなければならない可能性がある

相続発生前にあらかじめ試算しておくことが大切です。

数次相続・代襲相続について

1.数次相続とは
相続手続きは時間がかかることや放置されてしまうこともあり、手続き中に相続人が死亡して次の相続が発生してしまうことがあります。
この場合、相続人が変化するため、相続人全員で行う必要がある遺産分割協議等一部手続きに変化が生じます。
誰が相続人になるかというのは最重要事項ですので、相続が発生した順番は非常に重要です。

2.代襲相続とは
本来相続人となる者がすでに死亡していた場合、その者の子どもが相続人になることを代襲相続といいます。
代襲相続人は再代襲、再々代襲のように子がいなくなるまで続きますが、兄弟姉妹が相続人の場合は、代襲できるのは兄弟姉妹の子どもまでとなります。

遺留分について

遺留分とは、遺言書の内容に関わらず、法定相続人(兄弟姉妹を除く)に最低限度保証された相続権の割合のことです。

例えば、夫・妻・子の3人家族の場合、夫が死亡して遺言書で遺産のすべてを愛人に渡す旨の記載があった場合、妻と子は遺留分により遺産価格の2分の1の金銭を請求することができます。

遺留分の割合は以下のとおりです。
配偶者のみ 2分の1
子のみ 2分の1
親のみ 3分の1
配偶者と子 配偶者4分の1 子4分の1
(複数人いる場合は等分する)
配偶者と親 配偶者6分の2 親6分の1
(複数人いる場合は等分する)

遺留分が認められているのは、配偶者・子・親であり、兄弟姉妹には認められていません。(つまり、兄弟姉妹が相続人になる場合は遺留分を無視した遺言書を作成できます)

遺留分を考えずに遺言書を作った結果、争いに発展しまう可能性がありますのでご注意ください。

お問い合わせ

PAGE TOP